“MBLA 2006”受賞者

BCA/MBLA講演ツアー紀行文

寺尾 潤
“MBLA 2006”受賞者
MBLA 2006の応募から受賞講演ツアーを終えて
京都大学大学院工学研究科 准教授 寺尾 潤
「世界トップレベルの大学で講演をし、我々の研究の位置づけを再確認してみたい」そんな思いとは裏腹に、「今の自分では実力不足ではないだろうか」という懸念が拭えず、正直に言えば応募を躊躇する気持ちもありました。そんな迷いの中、書類審査を通過すれば有機合成化学分野におけるオールスターとも呼ばれる先生方による面接審査を受けられるということを知りました。合否などはともかく、「これこそ現在の研究内容をじっくりと紹介できる絶好の機会、この時を逃すな」との思いで私は応募に踏み切りました。簡潔明快な発表資料の作成に重点を置き、何度も推敲を重ねたことは大変貴重な経験となりました。幸いにも受賞が決定し、身に余る光栄と欣んだのも束の間、全米の一流大学での講演が現実のものとなるにつれ大きな重圧を感じることとなりました。このプレッシャーに対して心の励みと自信に繋がったのは、世界的に著名な審査委員の先生方が私の発表に対して高い評価を与えて下さったことです。訪問先は、Merck Research Laboratories(U.S.A.)のTschaen博士がアレンジして下さったハーバード大学、シカゴ大学、プリンストン大学、スタンフォード大学に私が希望したマサチューセッツ工科大学(MIT)、ミシガン大学、カリフォルニア大学・サンタバーバラ校(UCSB)を加えて頂きました。受賞決定から渡米までの1年間を振り返ると、待ち遠しさからか時の経つのが長く、それだけ長時間プレッシャーを感じ続けていたように思います。しかしツアーの18日間は、私の研究者人生においてあまりにも貴重な体験が凝縮されていたため、あっという間でしたが、最高に充実した時を過ごすことが出来ました。予想していたよりも、今回のツアーでは研究体制の違いがあるとはいえ、日米のトップレベルと言われる研究機関の差は感じられませんでした。唯一特筆すべきは、厳しい競争をくぐり抜け、研究室を主宰している同世代の業績と知名度の差でしょうか。この貴重な体験を機に、今までとはまた違った感覚で自分自身を見つめ直すことができるようになり、今後、さらなる飛躍を目指し、誠心誠意努力し研究に打ち込む決意を新たにすることができました。この様な素晴らしい体験ができたのは、Tschaen博士、安田博士を始めとするMerck Research Laboratories(U.S.A.)、万有生命科学振興国際交流財団の方々や、ご多忙にも関わらず温かく迎え入れて下さった訪問先のホストの先生方のお陰であり、この場を借りて厚くお礼申し上げます。

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