オーガナイザーから

第34回 万有札幌シンポジウム
有機化学:センスとこだわりが生み出す分子たち

第34回 万有札幌シンポジウムOrganizer
北海道大学大学院理学研究院 谷野 圭持

 北海道で毎年開催される有機化学の関連行事のうち、万有札幌シンポジウムは最も規模が大きくかつ活発なものです。数多くの学会やシンポジウムが開催される関東や関西とは異なり、地方の学生が、一流の先生による最先端の講演に接する機会は限られています。この問題に対する答えの一つとして創設されたのが万有札幌シンポジウムであり、その成功を受けて仙台と福岡で相次いで万有シンポジウムが開始された歴史的な経緯があります。
 さて、新型コロナウィルス感染症による社会の劇的な変化が始まってから、2年以上が経過しました。オンデマンド方式を含むリモート授業の本格的な導入は、大学で起こった最も大きな変化の一つです。利便性向上の反面、対面授業での臨場感や良い意味での緊張感は補い難く、微妙なニュアンスの伝達は極めて困難となりました。この問題点は、学術講演においても同様です。一昨年と昨年、本シンポジウムは聴衆を入れない完全オンライン開催となりました。例年以上の参加者がありましたが、講師の先生に札幌を訪れて頂くことは叶わず、かつてのスピード感ある活発な質疑も難しいという問題が残りました。そこで今年は、入場可能な人数は限定されるものの、会場での講演を復活させると同時に、中継を行うハイブリッド形式での開催を企画しました。貴重な入場の機会を得られた学生諸君には、ぜひとも活発な質疑の復活をお願い致します。
 今回のテーマは、「有機化学:センスとこだわりが生み出す分子たち」としました。有機化学には言うまでもなく、社会的な問題を解決して人類の福祉に貢献する重要な役割があります。最短の期間で解決策に到達し、成果を挙げた研究者の優秀さに疑いはありません。しかし、課題解決にのみ集中したテーマ設定は、幅広さと奥深さを兼ね備えた自然科学の本質から遠ざかる懸念があります。自らの興味にこだわり、その課題にじっくりと取り組み、独自のセンスを発揮していくことが、研究者の理想像ではないでしょうか。新しい分子を作りだしたり、様々な機能を付与したりできる有機化学は、その実現に最適の分野といえそうです。今回お招きした先生方の講演を通して、本テーマが皆様に深く理解して頂けることを願っています。
 最後になりましたが、本シンポジウムの創設から30年超にわたる親身のご支援に対し、改めて公益財団法人MSD生命科学財団に厚く御礼申し上げます。