オーガナイザーから

第35回 万有札幌シンポジウム
有機合成の限界を超える

第35回 万有札幌シンポジウムOrganizer
北海道大学WPI-ICReDD/大学院工学研究院 伊藤 肇

 2019年の終わりから世界中に広まったCOVID-19による制限された日常もいよいよ終わりに近づき、2023年第35回万有札幌シンポジウムは完全な対面で行われることになりました。また、遠隔地やスケジュールの都合などで対面参加されない参加者様には、オンライン配信という形で聴講していただけるようになりました。COVID-19の状況は、予測できない出来事をきっかけに、日常の生活が世界全体で大きく変わってしまう一つの例を示しました。また、新しいワクチンや治療薬の登場、あるいはプラスチックから作られた医療器具やマスクなど、有機化学がベースとなる科学技術が、その収束に非常に重要な役割を持つことも実感されました。さて、これから先の未来はどうでしょうか?空気中の二酸化炭素の増加による地球温暖化への対応や、物資の大量消費による資源不足と汚染、また次なる感染症の可能性などは人類を脅かす喫緊の課題になっており、有機化学が解決に力を発揮するべき状況です。近代有機化学は100年以上の歴史があり、重厚な研究の蓄積がある一方、最近の他のテクノロジーの猛烈な進歩に比べて比較的変化がゆっくりであるという側面があります。今のままで間に合うのでしょうか?今回の万有札幌シンポジウムは、「有機合成の限界を超える」というテーマを掲げました。科学技術の発展は、他の分野との交流や融合が一つのドライビングフォースです。その観点から、今回の第35回万有札幌シンポジウムでは、有機化学における新しい視点や技術、方向性をもち、新しい有機化学を開拓されている先生方にご講演をお願いしています。このような最先端の研究の場におられる先生方と、若い研究者たちが出会うことで、近い将来これから人類を待ち受ける多くの問題を解決し、「有機合成の限界を超える」イノベーションが生み出されることを期待しています。
 最後になりましたが、本シンポジウムの創設から30年超にわたる親身のご支援に対し、改めて公益財団法人MSD生命科学財団に厚く御礼申し上げます。

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