留学体験記

  • 順天堂大学医学部 循環器内科
  • 土肥 智貴
  • 留 学 先:Columbia University Medical Center/ Cardiovascular Research Foundation, New York, NY, USA
  • 留学期間:2012年~2014年(2年間)
【留学を決めた理由】
留学をしたいと考えた理由は、一旦臨床を離れて、「ひとつのこと」に集中して取り組みたいと考えたからです。やはり日本ではどうしても臨床から完全に離れるのは困難であり、昼夜自分の研究や論文執筆について考えるのは困難です。更には臨床医として生きていく前に、異国の地で違う文化に触れながら何かに没頭するのは今後の人生で大きな糧になると思ったからです。

【留学して良かったこと】
良かった点はいくつかあります。まず、これまで患者さん中心であった日々の時間が、自分の研究やキャリアアップのために動くということです。留学中もカテラボでのDuty workやカンファレンス、ミーティングもありましたが、日本よりは確実により多くの時間を自分のために費やせます。逆にそれは仕事や研究が受け身なものから能動的になり、物事の責任はより自分にあるということですが・・・。あとはやはり他国の医師達と知り合い、様々な意見交換ができることは大きな刺激になりました。また、米国の心血管カテーテル治療が実際に数多く見られたことや、コアラボでのスタッフがどのように働いて、ひとつの臨床研究が作り上げられているかを、はじめからおわりまで見られたことも良かったです。私が留学したラボには、誰よりも働く創造性豊かな女性ボスや数多くの大規模研究を主導しているボスがいました。彼らと共に研究できたことは本当に大きな財産です。そして、大都市ニューヨークを2年間満喫できたことも貴重な思い出です。

【留学して苦しかったこと】
先にも述べましたが、研究アイデア、データ構築、論文作成までのながれが、自分の努力次第で大きく変化する環境でした。自分の仮説やアイデアがうまく他人に伝えられなかったりすることや、その仮説を裏付けるようなデータがだせないことで苦労することもありました。また、構築したデータを様々な角度から解釈するのに時間がとられると留学終了までに結果がだせるか不安になることもありました。また、カテラボでの術者との英会話でとても苦労しました。彼らは治療や手技に専念しており、会話内容の細部が聞き取れない際にもなかなか聞き返しにくい状況が多々ありました。

【留学を通して学んだこと】
多くの大規模臨床研究を計画・遂行するラボで、MDやスタッフがそれぞれの立場でそれぞれの才能を生かして個性的に働いている現場で多くを学びました。各部署のボス達はハードワーカーであり、朝早くから夜遅くまで働いています。日本人だけが長時間働いているのではないかという考えは完全に間違っていることを知りました。また、ひとつの疑問点を考え抜き、それを解決するまで多くの方々の助けを借りながらそれに向き合うことの重要性を学びました。言い換えれば、研究はひとりのちからでは決して出来ないことを学び、コミュニケーションや議論をすることが大切だということです。更に、異文化に触れて仕事や生活することで、日本でのあたりまえがあたりまえでなくなり、適応すること・寛容になることがそれらを解決する最善策であることも学べました。

【後輩達へのメッセージ】
日本でも有意義な臨床や研究はできると思いますが、どうしても日々の業務や雑用に追われることが多いと思います。留学すれば自分の環境を大きく変えて、何かにチャレンジする機会が生まれます。これはとても貴重ですし、自分への投資としては絶好のチャンスです。そして、外国生活では日本語も通じませんし、「おもてなし」の期待できない社会生活が思う存分体験できます。仕事や日常生活で数多くの苦労をするのも間違いありません。でも安心してください。これらも慣れてくればかけがえのない経験であると感じますし、いい思い出となるでしょう。それらを承知のうえ、本気で留学したいなら必ず誰かが本気で相談に乗ってくれますし、助けてくれます。ぜひ頑張ってください。