留学体験記

  • 東北大学 循環器内科
  • 青木 竜男
  • 留 学 先:メイヨークリニック、ロチェスター・ミネソタ州・アメリカ
  • 留学期間:2013年~2014年(1年間)
 私は、2013年4月から2014年3月まで1年間、アメリカのメイヨークリニックに留学させて頂きました。メイヨークリニックは中西部のミネソタ州、ロチェスターにあります。ロチェスターは人口10万人程度の、鹿やうさぎなどの野生動物をしばしば見かける自然豊かな町で、毎年、アメリカで発表される住みやすい町ランキングの常連になっています。また、産業の中心はメイヨークリニックであり、まさに“医療の街“と言えます。滞在中、記録的な寒波の影響で気温が- 30 ℃まで低下し、驚く様な寒さを経験しました。人々は穏やかで治安も良く、初めての海外生活には最適の場所でした。

 皆さんもご存じの様にメイヨークリニックは大規模な総合病院であり、アメリカ国内はもちろんの事、海外からも多くの患者が来院します(昨年はダライ・ラマが定期受診のために来院し地元紙に取り上げられていました)。そのため症例数は非常に豊富で心臓カテーテル検査は年間7000件以上、これまでに450例以上の心臓移植が施行されており、アメリカで行われている循環器分野のBest Hospital Rankingでは長年にわたって上位にランキングされています。

 私は冠動脈のimagingや血管内皮機能を専門とするAmir Lerman教授のラボに所属し、臨床研究をしていました。
日本、ドイツ、メキシコ、スイス、インド、韓国、中国など世界各国から研究者が来ていましたが、東アジア地域以外からのfellowは医学部を卒業したての医師が多く、医師として研修を始める前に研究を行うためにメイヨークリニックに来ていました。メイヨーでの研究業績はアメリカでレジデントの職を得るのに有利に働くのだそうです。統計や臨床の知識がほとんどない彼らと英語でディスカッションをしながら研究をまとめていく過程は自分にとっても勉強になりました。また、研究中に印象に残った点は、メイヨークリニックでは医師のみならず、研究や臨床に関わるコメディカルを含めたスタッフみんながリサーチマインドと誇りを持って働いていると言うことでした。

 私は移植心の冠動脈病変と冠動脈周囲の微小血管について研究を行いました。心移植では冠動脈がびまん性に狭窄するCardiac allograft vasculopathyがレシピエントの予後に大きく影響します。これらの病態をより早期に発見し、介入することができれば心移植患者の予後の改善につながります。通常の動脈硬化では冠動脈病変出現の前に血管周囲で微小血管が増生し、病変の進行に関与していることが明らかになりつつあります。そこで移植患者で光干渉断層法(OCT)を用いて、早期冠動脈病変と周囲の微小血管との関係を検討しました(Evaluation of coronary adventitial vasa vasorum using 3D optical coherence tomography--animal and human studies.Aoki T, Lerman A et al. Atherosclerosis. 2015 Mar;239(1):203-8)。

 また、研究の合間には休暇を利用して、イエローストーンやグランドキャニオンといった国立公園への旅行を楽しむことができたのも大きな思い出です。2014年4月より大学で働き始めましたが、留学で得たことを少しでも移植医療の発展に還元できればと思います。