留学体験記

  • 慶應義塾大学医学部 循環器内科
  • 片岡 雅晴
  • 留 学 先:ボストン小児病院 循環器科、ボストン・アメリカ
  • 留学期間:2012年~2014年(2年間)
【留学を決めた理由】
 留学をしたいと考えた理由は、自らの将来的な医師としての目標を考えた際に、臨床だけでなく基礎研究にも力を入れて取り組みたいという思いがあり、そのためには、もう少し研究に集中する時間を作って、研究の底力をステップアップさせたい、と考えたことが大きいと思います。

 留学先を選ぶ上での自らの希望として、①これまでMDとして生活してきたため、あえてMDがいないPhDだけの
ラボに行って、MDの環境では学べない考え方や研究のノウハウを習得したい、②できれば英語のトレーニングのためにも日本人がいないラボが良い、③これまでに自らが取り組んできた研究内容と関連しない、まったく新しい発想や研究技術を必要とされる環境のラボに行き、もう一歩自らの将来的な研究の幅を広げたい、④できれば、まだPIとして独立して数年以内で年齢的にも油が乗っていて、これからもどんどんと業績を出そう、という意気込みがあるボスがいるラボがよい、という、かなり面倒な複数のこだわりがありました。それらの希望を叶えてくれる可能性のありそうなPIの連絡先をPubmed等から複数探してE-mailを送ってアプローチをし、最終的に留学先のボスからもらったメールの文面から研究環境の可能性を感じ、ここに決めよう、と決断するに至りました。

【留学して良かったこと】
 ラボメンバーに恵まれたことが大きいです。留学先のボスは中国人のPhD(MDではない)のPIで、ラボメンバーは計9名のうち、自分を除いた他の8名全員がPhDで、中国人が5名、ペルー人1名、ギリシャ人1名、アメリカ人1名でした。皆、非常にコミュニケーション良好で明るい仲間であり、基礎研究の力量も足りない自分に対してとても親切に接してくれました。自分だけがMDであり、動物の手術実験の経験があったため、ラボメンバーのマウス手術やマウスの心エコー検査は全て引き受ける代わりに、自らの研究内容でのvitro実験の一部をラボメンバーが手分けして効率よく進めてくれたりなど、お互いに協力し合いながら研究を進めることができました。また何より、ボスには研究の考え方や進め方のコツを丁寧に指導してもらい、確実に今後の日本での研究に活かしていけるものと思います。

【留学して苦しかったこと】
 自らのメインとなる研究の方向性が見えてきて成果が出始めるまで、準備期間やトレーニング期間も含めてかなりの期間を要しました。複数の候補因子からさらに重要なものを、ウイルスベクターを用いた実験にて絞り込んでいく作業を行いましたが、ベクターの作成や動物実験に数ヶ月を要し、その間は結果が出る保証もなく、不安な想いを抱えてひたすら研究室内で時間を過ごしている時には、確かに苦しかったです。

【留学を通して学んだこと】
 日本人もどこの国籍の人も関係なく、皆が一生懸命に研究に取り組む姿勢には国籍は関係がないことを改めて感じました。自分の留学したラボのメンバーが人柄も揃っていたのかもしれませんが、研究に対する姿勢や少人数のラボでもいかにメンバーと協力してチームとして多くの成果を上げるかを常に考えながら取り組む姿勢など、改めてチームとしての重要な姿勢を学ぶことができました。また、英語には苦労した状況もありましたが、英語が流暢かどうかや発音アクセントが正しいかどうか、が大事なのではなく、落ち着いて誰にでも聞き取りやすく話すことに気を付けて、しっかりと自らの言葉で話せば、皆が理解してくれて特に困らずにコミュニケーションがとれるものなのだな、ということも、改めて実感しました。

【後輩達へのメッセージ】
 留学をしたことは自分にとって貴重な経験であり、間違っていなかった、留学してよかった、と思えます。機会があるならば留学をすることは貴重な経験であり、ぜひとも適切なタイミングでしっかりと検討したほうがよいと思います。